アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
韓国人権紀行 私たちには記憶すべきことがある
青瓦台前100メートル!
日本でも報道された、「ろうそくデモ」が到達した地点です。
近代朝鮮は、大日本帝国による侵略と植民地支配を経て1945年、日本敗戦によって解放されたものの、東西冷戦の最前線となって南北に分断され、朝鮮戦争で膨大な数の人びとが犠牲となりました。
韓国は「反共」を国是とする軍事独裁政権が支配し、80年代末にようやく民主化の光が差しました。その後も、進歩派と保守派の権力闘争が続いていますが、民主主義を渇望し、血みどろの戦いを続けてきた人びとはさらなる高みを目指して歩み続けています。
本書は、「光州虐殺の元凶を処罰せよ! 光州は生きている!」
と叫んで焼身自殺した弟の遺志を継いだ人権活動家が──
「済州4・3の現場」
「ソウル・戦争記念館」
「ハンセン病患者を隔離した小鹿島」
「光州5・18抗争の現場」
「軍事独裁政権が反共政策の“砦”とした南山安企部と南営洞対共分室」
「帝国日本と独裁政権が政治囚を処罰した西大門刑務所歴史館」
「民主化・労働問題・人権問題に命を捧げた人びとが眠る磨石牡丹公園墓地」
「ろうそくデモの起爆剤となったセウォル号惨事の現場」
を訪ね、犠牲となった人びとの哭声(こくせい)に耳を澄まし、より良き社会を目指して前に進む誓いを新たにします。
著者は最後に「歴史は勝者の記録だと言われる。一面では当たっている。
だが、それよりはるかに長期的観点で見れば、歴史的事実に疑問を抱く人々がいる限り、
その歴史は必ず変えられている。被害者が声をあげ、権力が挑戦を受ける時、歴史は再び書き換えられる。私たちは今、犯罪が正当化された権力の歴史を消し去り、遅れはしても、人権の歴史を新たに書き綴っていく途上にあるのだと信ずる。
過去の国家暴力―国家犯罪が可能だったのは、その時代に多くの人々が沈黙したからである。知らぬうちに暗黙の共犯者になりたくなければ、韓国社会の被害者たちが自分の体験したことを、いかなる恐れもなく語ることができるようにしなければならない。
私たちは、彼らの言葉にいっそう傾聴しなくてはならない」と結びます。
ここにある「私たち」とは誰か?
日本の「私たち」もまた記憶すべきことがあるのではないか?
そんな思いを込めて本書をまとめました。
Ⅱ 戦争を記憶する方式──戦争記念館
Ⅲ 孤島に生きてきた人々──小鹿島
Ⅳ 処罰されない者たちの国──光州5・18抗争の現場(1)
Ⅴ みんなが私たちだったあの日──光州5・18抗争の現場(2)
Ⅵ 狭い窓、小さな部屋、秘密階段──南山安企部と南営洞対共分室
Ⅶ 監獄でも消された顔──西大門刑務所歴史館
Ⅷ 春を訪ねる三つの道──磨石牡丹公園
Ⅸ 別々に流れる時間──セウォル号惨事の現場
おわりに
訳者あとがき 真鍋祐子
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