生活指導と学級集団づくり 中学校　　シリーズ教師のしごと　３

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勉強も難しくなり、学力の差がだんだんと広がっていく中学生たち。日々、競争にさらされ、家庭の事情、貧困の問題などの「生きづらさ」を抱えています。

けれども「自己責任」がはびこる日本の社会は、かれらの持つ事情など考慮されずに、進路で切り刻まれていくのです。

アルコール依存症の父親に振り回され、不安定な子。学年で最も大きな課題を抱え、朝から登校できず、教室にも居場所のない子。最も困難な状況にいるかれらの居場所を学校のなかにつくり、仲間とつなぎ、希望と共に社会に送りだそうとする先生たちがいます。

かれらに寄り添い、日々悩みながら成長を支えていく教師の実践は、思わず涙が出ます。
「中１ギャップ」などの言葉にとらわれず、今の中学校を知り教育を考えるために、現場の教師の方、教育学を学ぶ学生や研究者をはじめ、多くの方に読んでいただきたい１冊です。

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Ⅰ　中学校の教育課題と生活指導、集団づくり　　（照本　祥敬）

１　中学生の発達と自立をめぐる困難な状況　
（１）中学生の発達特性と発達をとらえる視点
（２）「発達の早期化」と「中１ギャップ」？　
（３）「生きづらさ」の根源を考える　
２　中学校教育の現実と課題　
（１）貧困問題と制度としての学校が抱える矛盾
（２）教師としての「生きづらさ」
３　「生きづらさ」をこえるために――生活指導、集団づくりの地平へ
（１）対話と応答の空間のなかに〈教育〉を紡ぐ
（２）自治と学びの追求――集団づくりがめざすもの　


Ⅱ　行事をとおして集団を育てる
【実践記録】「自分たちで決めて自分たちで実行」――｢ダメ学級」からの前進
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　藤原　洋
１　三年二組との出会い　
２　怒濤の二カ月　
（１）「ボールがガラスを割った」
（２）いろんな思いを巡らせた修学旅行
（３）前進が始まった運動会
３　文化祭に向けて――合唱コンクールやるの？
４　半年の取り組みで得た自信を胸に前進　
【解説】「自分たちで決めること」にこだわり続ける　　山本敏郎
１　スケジュールの「消化」に終わらせない
２　子どもたちが抱えている課題は何か　
３　自分たちで決める経験からリスタート　
４　「本気」と「団結」を子どもたちのものに
〈コラム〉１年生の担任――学級開きからの指導構想　　　柴坂和彦
　１　出会いの場の演出――学級開き　
　２　指導の課題を予測する　
　３　班長会を楽しい会に　
　４　一年間の活動を通して


Ⅲ　対話と応答のなかに指導を確立する

【実践記録】Ａ中学校での三年間　　　河瀬　直
１　「荒れ」のなかのＡ中学校　
２　一年生の時……保護者とともに　
３　活動をつくる――二年生になっての取り組み　
４　直之とつながる
５　直之とともに歩むリーダーたち
６　三年生になって　
７　俊次のタイマン　
８　俊次と直之　
９　暴力に正義もくそもありゃしねえ
10　最後の旅行と卒業式
【解説】子どもの生きづらさに応答する教師の指導　　　高橋英児
１　子どもの問題行動の背景にある「生きづらさ」と対峙する
２　「子どもの声を聴く」　
①語り出したくなる場をつくる――信頼される大人になる　
②子どもたちの願い･要求をつかみ、活動を提案する　
３　子どもと子どもとをつなぐ――直之･俊次と周りの子どもたち　
４　暴力の中にいる子どもの自立の課題にどう向き合うのか　


Ⅳ　話し合いから学級の自治をつくる
【実践記録】３年Ａ組の物語　　　　　　　　　　　　　　　加納昌美
１　始業式　
２　体育祭実行委員　
３　選出の話し合い　
４　カードゲーム　
５　団わけ　
６　修学旅行　
７　隆たちの反乱　
８　浩　
９　体育祭　
【解説】一人ひとりの発達を保障しながら集団の関係を組み替える　　藤井啓之
１　現在の中学校はすべての生徒一人ひとりの発達を保障しているのか　
２　個々の発達課題への着目と弁証法的な発達観　
３　もう一人の自分を育てる　
４　課外時間の自由の確保　
５　友情と恋愛の相談を持ちかけられる教師　
〈コラム〉部活指導で大切にしたいこと　　栗城利光
１　部活指導の〝魔力〟　
２　めざすものは何？　
　（１）勝利　
　（２）勝利至上主義はダメ！　132
３　（負けても）価値ある部活指導のポイント
　（１）指導目標を明確にしよう！　
　（２）指導方針は？　
　（３）部活指導における「集団づくり」
　（４）教師の立ち位置と保護者との共同　


Ⅴ　進路をみつめ、進路を拓く
【実践記録】俺の人生ゎ、ここから　　　　　　　　　　　　　　　　　伊吹　望
１　はじめに　
２　大きな課題を抱えた生徒たちのプロフィール　
３　シンジとユウマの孤立から再度グループ化へ（三年生）　
４　進路に対するそれぞれの苦悩　
５　このまま卒業式を迎えるわけにはいかない　
６　教育長との面談（二月十日）　
７　この選択はお前の人生がかかってるんや！　
（１）シンジとの対話（二月十三日）　
（２）進路懇談会で（二月十四日）　
（３）親方との顔合わせ（二月一八日）　
８　それぞれの道で頑張ることこそがシンジへの応援メッセージだ！　
９　シンジの就労体験をオープンにする　
【解説】「捨てられた」子どもを見捨てず、生きることをあきらめさせず　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　福田 敦志
１　くり返される「捨てられた」体験を見つめる　
２　ケンヤからシンジへと実践の軸が変化することの意味　
３　課題としての集団指導とその可能性　
４　教育と福祉の統一としての進路指導　


Ⅵ　「子どもの貧困」と向き合う教育
【実践記録】龍と大介がいた三年間　　　　　　　　　　　　　　　波田みなみ
１　大介の家の事情　
２　母の孤独　明日の米がない！　
３　龍も大変だった！　
４　「友だち大好き！」な龍につなぎとめられる
５　しかし…ジェットコースター龍と、光が見えてきた大介　
６　広がる大介家への支援体制と、落ち着かない龍　
７　しんどさを共有できる仲間に　
【解説】「貧困」に立ち向かう教師と生徒たち　　　　　　　　　　　照本祥敬
１　子どもが生きている現実と向き合う――「貧困」の連鎖を断ち切るために
２　「しんどさ」を「思い」として聴き取る
３　波田実践における集団づくりの意義　
４　教師のしごと――反貧困の教育実践の位置と役割　
〈コラム〉保護者との関係づくりの基礎・基本　　　　　　　　　　　　加納昌美
１　保護者との出会い方　
２　保護者の視点をもつ　
３　保護者の「事情」に目配りする　
４　同僚との関係を重視する