アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
困っている教師へ
今、日本の教師はかつてないほど、厳しい職場環境の中で日々働いています。
長時間労働もさることながら、とにかくやらなければならないことが多すぎて、どんなにうまくこなしても時間内に仕事が終わらないでしょうし、次々と押し寄せる〇〇教育といった新しい教育活動に振り回されている人も多いでしょう。
コロナ禍で人との関わりが制限される期間が続き、子どもの健全な発達も危うくなっています。幼少時の交わり体験の不足からか低学年での暴言・暴力は驚くほど増加していますし、不登校・登校拒否への対応だけでも大変だと思います。学級崩壊状況も当たり前のように起きています。まさに日本の教師たちは心を磨り減らしながら、何とか耐えて日々を送っておられるのではないでしょうか。
人は孤立感を感じるときに、日々の生活に不安と不満が大きくなり心身の限界を越えてしまうときがあります。しかし、そんな困難を打開する道がないわけではありません。本書に取り上げた6つの実践記録には、そんな教師たちの闘いの日々が綴られています。子どもが何に苦しんでいるのか、成長への課題は何かを考え、日々模索しながら子どもたちに向き合っていく姿が見えます。
第1章 豊かな少年期をつくる
フィーバー&パラダイス☆〈永野 茜〉
①打ち上げ花火 / ②四月 / ③五月 / ④子どもたちから見たナギ /
⑤二学期 / ⑥指導を見直す / ⑦二年生になりたくない
【解説】子どもを絶対に切り捨てない決意を支える実践がここにある
①小学校低学年の学級づくりの課題 / ②ナギさんはどんな子どもか /
③「みんなで」を意識した声かけと特性に配慮した関わり / ④個人指導と同時に集団指導も加わって / ⑤ナギさんと周りの子どもたちにとって、この教室はどんな意味を持っていたのか
新しい世界の扉を少しずつひらこう〈秦 和範〉
①トラブルの日々 / ②太郎の暴言 / ③班長会で考え進めていったクラスの取組 / ④二学期スタート / ⑤運動会でのソーラン、そして、サラとみんなとの出会い直し / ⑥サラの願いをみんなで考えよう / ⑦クリスマス会に向けての準備
【解説】子どもとの「出会い直し」を重ね、新しい世界へ ①中学年実践のポイントは /②トラブル頻発の中で方針を打ち立てる /
③すぐれた個人指導の展開と集団指導の方針 / ④つながり始めた子どもたち / ⑤太郎さんの変化を生み出したのは
転校生がやってきた!〈鴨川昇吾〉
①ショウタの転入 / ②修学旅行 / ③夏休み明け / ④運動会 /
⑤小学生音楽会 / ⑥学芸会 / ⑦卒業に向けて
【解説】自治的活動を通してつながった子どもたち
①高学年実践の課題とは / ②この実践の難しさ /
③トラブル続出からショウタさん理解、そして指導方針の明確化 /
④行事を通して / ⑤音楽会、その後
第2章 葛藤激しい思春期
七分の通学路〈兼田 幸〉
①校長室での出会い / ②舞い散る桜と晴天 / ③雪の事情 /
④濡れた髪と金一封 / ⑤小さな成功体験 / ⑥深まる他者理解と葛藤 /
⑦雪の進路選択 / ⑧修学旅行作戦会議 / ⑨旅立ちのとき
【解説】「ひと」理解に貫かれた寄り添いと自立への支援
①母子分離不安を抱える母への支援 / ②母親からの自立を目指す、配慮に満ちた支援 / ③「子どもをよくみる」という専門性を基盤とした行き届いた支援
クラスに引力を〈星野夜鷹〉
①エネルギー不足の生徒たちのために / ②翔の思い / ③がんばれない佳祐 / ④不登校の子たち / ⑤体育大会・合唱コンクール /
⑥タイマン事件 / ⑦クラスの引力
【解説】問題行動をどう読み取り、支援につなげるか
①学力に困難を抱えている子への伴走 / ②育ちの過程で傷を抱える生徒への伴走 / ③個と個をつなぎ、孤立しがちな子に仲間意識をそだて集団として成長させる指導
ウタ あなたはどうしたい〈香川良子〉
①入学式 / ②新体制発表 / ③限界を迎えた不安定さ /
④三年生 進路決断に向けて
【解説】葛藤と軋轢を乗りこえて
①共感的他者として、ウタさんの自立へのジグザグに寄り添う支援 /
②自己決定による進路選択を実現するまで / ③学級集団への呼びかけと応答
第3章 困難な状況をどう打開するか 実践の視点
1 問題行動の裏にある「ワケ」を考える
2 子どもに委ねる
3 子どもと共に学びをつくる
おわりに