アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
第2の進路指導
自由と権利の指導の時代
いま、1960年代の高度経済成長期に固まった、[高卒・大卒→正社員→結婚→定年退職→年金生活]、といった、制度や組織に頼った生き方を「標準」とした生き方が明らかに崩れてきています。
本書では、この「転換期」に求められる、単なる「学校選択指導」ではない新たな進路指導を「第2の進路指導」として論じていきます。
第1章では、「第2の進路指導」とはどういったものなのか、またそれが必要になってきた社会的背景について述べます。
著者は、「第2の進路指導」の中身は「自由と権利の指導」であると定義づけ、「自由」とは国の経済政策や、多数派の生き方に同調をせまる「圧」からの自由であり、「権利」とは個人として「幸せになる権利」であると述べます。
第2章では、①要求を実現させる権利の教育、②情勢分析力と見通しの力(メディア・リテラシー)、③自治の指導、の3つのテーマを主軸にして、「第2の進路指導」をどう指導・実践していくのかを具体的な実践例を示しながら構想します。
第3章では、教職経験者15人に取材をして、それぞれのキャリアストーリーとセカンドキャリアについて具体的に紹介します。
解説の最後で松田氏は本書を以下のように評しています。
「だからこそ、塩崎さんは、大人としてそのような社会をつくりだした責任を感じ、本書を通じて、自分の人生は自分の好きなように生きていいのだと、子どもたちに響くようなやり方で呼びかける方法を手を変え、品を変え、提示しようとする。「第2の進路指導」とは、まさに自由と権利にもとづく人生をつくろうという、子どもたちへの呼びかけなのである」
第1章 「第二の進路指導」が求められる時代
✜離職・転職者増加の背景⑴ ~非正規雇用者を増やす政策~
✜離職・転職者増加の背景⑵ ~「キャリア」の転換~
✜「進路指導」の課題
✜進路指導が「学校選択指導」に偏る二つの理由
✜今こそ「第二の進路指導」が必要
第2章 「第二の進路指導」で教えること
【1】要求を実現させる権利の教育
①「生きづらさ」を共有し共同をつくりだす
◈「生きづらさ」を共有する ◈「生きづらさ」を抱えた仲間と要求実現へ
②自由であることの意味を共に考える
◈みんなの権利を大切にする共同力 ◈「自由席」に取り組む中で
◈参加しない「自由」もある
③夢見る権利を保障する政治の責任を問う
【2】情勢分析力と見通しの力(メディア・リテラシー)
◈「クローズアップ・ザ・ニュース」や「全体雑談」から ◈原発を授業する
◈ちょっと待てよ……、と疑ってみる
【3】自治の指導
◈形骸化する子ども自治の中で「自主集会」 ◈参加することの意味を問いながら
◈「自治」は「学び」があってこそ ◈学校現場に共同の力を
①実践の自由を励ます
②ヘルプできることも教師としての大切な力量
③上下関係を超えて議論できる文化をつくっていこう
第3章 今どきの教師のキャリアに注目して
世界に貢献できる仕事をしてみたい……
ディズニーランドとの二刀流
フリーランスティーチャーとして生きる
スーパー講師
外から日本を見る
教師の子育て
「幹部候補世代」の生き方
一度距離を置くことも選択肢の一つ
指導教育行政で一六年
学校とゆるやかに「ばん走」する
小・中学校現場から大学へ
解説 時代の転換期に、自由と権利の進路指導をつくる(松田洋介)
1.「第二の進路指導」の前に
2.「第二の進路指導」が登場する時代的条件
(1)「学校進路指導」の時代 (2)「学校進路指導」からの転換
3.不安定化する社会における進路指導の争点
第1章
「第二の進路指導」が求められる時代
(1)非正規労働をどうとらえるか (2)教科指導と進路指導をどうつなげるか
(3)自治の指導と進路指導との関係
4. 第二の進路指導が成立する条件は何か
(1)第二の進路指導が成立する学校の条件 (2)第二の進路指導をつくる主体的条件
5.自由と権利にもとづく進路指導をつくる
エピローグ 子どもたちを信頼して励ます指導を
参考文献・サイト