アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
僕のリスタートの号砲が遠くの空で鳴った
僕は、いくつもの出会いに救われた。
人はだれも、どこからだってスタートできる。
2018年公開映画『野球部員、演劇の舞台に立つ!』で、
林遣都さんが演じた本書著者の田原照久氏は、中学時代から周囲に苛立ち、荒れた日々を送っていました。
絶望の淵から立ち上がれたのは「演劇」でした。
演劇部に引き込んだ顧問と生徒の葛藤の日々を赤裸々に綴りました。
人は何によって変えられるのか――悩める若者たちに学校は、教師は、社会は、どれだけ手を差し伸べられているだろうか。「教育とは何か」――本書は改めてそのことを問います。
――心が死んでいくと景色も色を失うのだな。
*【担任の記】高校の職員室にて―あと一週間で入学式
2 扉の向こう側
――僕は、他者を恐れていた。
違う、他者に写る臆病な自分を恐れていたのだ。
*【担任の記】教室にて―入学式から一ヶ月
3 孤 立
――他者がいなければ孤独にならない。
しかし他者がいなければ、救いはない。
*【担任の記】やっと夏休み―演劇部に苛立つ野球部員たち
4 予期せぬ感情
――教室に踏み入れた足が、少し震える。
無意識に口元が緩んでいた。
*【担任の記】放課後の教室にて―文化祭を通して
5 スイッチ
――僕のリスタートの号砲が、遠くの空で鳴っていた。
*【顧問(担任)の記】雨天体育館にて―十一月の演劇大会に向けて
6 お前に任せる
――必要とされることが僕の背中を押していた。
7 幕が上がる
――馬鹿みたいに明るくて広い空が見えるような気がした。
*【顧問(担任)の記】本番のステージにて―大会当日を迎えて
8 移り変わる季節の中で
――夢中になれることがあると、時間の流れを速く感じる。
毎日があっという間だ。
*【顧問(担任)の記】十二月、公民館公演に向けて―新たな挑戦が始まった
9 予 感
――目の前のドアが、まるで未来への扉のように感じる。
一歩踏み出し、乗り込んだ。
*【顧問(担任)の記】一年の終わり―亀裂が入ったクラスの中で
10 変 動
――俺みたいな素人が部長に?
*【顧問(担任)の記】二年になって―クラスを覆う険悪な空気
11 勇 気
――彼女は笑いながら、また泣いた。
*【顧問(担任)の記】二年、一学期の終わり―クラスに吹いた新しい風
12 絡み合う視線
――その視線の先に写る自分も、同じように笑っているだろうか。
*【顧問(担任)の記】二年二学期、大会に向けて―各々が主人公の脚本を作成する
13 三度目の春
――僕らのモラトリアムが終わろうとしている。
「あいつらと最後の大会に出たい」
*【顧問(担任)の記】卒業に向けて―君の、その、くるしみの方へただ渡って行く
14 卒業の日
――遠くの空で号砲が鳴る。
■〈物語の物語〉×××××××××××××××× [五條元滋]
■あとがき [田原照久]
■まだ高校生だった彼が教えてくれたこと [竹島由美子]