アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
児童養護施設の子どもたち
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親から虐待され、拒否されてもなお、「親の愛」を求める子どもたち。
自ら抱える葛藤ゆえに子どもに手を挙げてしまった母親――
80日間施設に泊まり込み、子どもたちと向き合い耳を傾け、親たちの苦しみを見つめた新聞記者による渾身の記録!
送り主の名はマンガ「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」。
年が明けて、各地の児童養護施設などに学用品や寄付などが寄せられた「タイガーマスク運動」が広がりました。
マンガの主人公・伊達直人は孤児院そだちです。
孤児院はいまでいう児童養護施設ですが、昔の孤児院と違って、施設の子どもたちのほとんどが、親のいる子どもたちです。
親からの虐待や、親の経済的な理由などで社会的な養護を必要としている子どもたちです。
社会的養護が必要とされる子どもたちは、全国で約4万人います。年齢やその子どもの抱える問題によって、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、自立援助ホーム、母子生活支援施設などの児童福祉施設に入るか、里親のもとで生活しています。
児童養護施設はその主要な役割を果たしている施設で、全国に約580カ所あります。原則として3歳から18歳までの子どもたち、約3万人が暮らしています。
本書は2002~03年に出版された『明日がある──虐待を受けた子どもたち』『明日がある──児童養護施設の子どもたち』(いずれも芳賀書店)を元に大幅加筆修正した本です。
著者は児童養護施設に暮らす子どもたちが抱え込んでいる思い、さまざまな問題を知るために、のべ80日にわたって施設に泊まり込み、子どもたちの声に耳を傾けてきました。
元本との大きな違いは、「虐待された子どもたち」の中から「その後」の彼らの軌跡を追いかけ、「心の傷」を抱えながらも懸命に生きる彼らに寄り添い、思いを聞き取った記録が収められています。
また、元の本には収められなかった、図らずもわが子を虐待してしまった母親3人のケースを掲載しました。「加害」の責任を免れることはできませんが、なぜわが子に暴力をふるってしまうのか、母親一人ひとりの生育歴から、「虐待の連鎖」を読み取ることができます。母親たちもまた自らが抱える「心の傷」に苦しみ、葛藤していることがよく分かります。
著者が10数年前から「虐待」や「児童養護施設」について取材を重ねてまとめた本書は、過酷な環境にさらされた子どもたちの思いを聞き取った貴重な記録です。ぜひ、多くの方々に読んでいただきたいと思っています。
Ⅰ 児童養護施設の子どもたち
さっちゃん sacchan
あっくん akkun
徹 toru
純一 junichi
千佳 chika
良太 ryota
Ⅱ 虐待を受けた子どもたち
健 ken
香 kaori
陽子 yoko
彩美 ayami
Ⅲ 修羅を生きる親たち
子どもに「嫉妬」する自分に気づく
「親への恨み」を子どもに向けて
愛を知り、子育てを取り戻す
おわりに
大久保真紀(おおくぼ・まき)
朝日新聞編集委員。1963年福岡県生まれ。国際基督教大学卒業。87年朝日新聞社に入社。盛岡、静岡支局を経て、東京本社社会部、くらし編集部、西部本社社会部などに在籍。2002年4月から編集委員になり、06年4月から約2年間、鹿児島総局次長を務めた後、現職。
【主な著書】
『中国残留日本人─「棄民」の経過と、帰国後の苦難』(高文研、2006年)
『買われる子どもたち─無垢の叫び』(明石書店、1997年)
『こどもの権利を買わないで─プンとミーチャのものがたり』(自由国民社、2000年)
『ああ わが祖国よ─国を訴えた中国残留日本人孤児たち』(八朔社、2004年)
『虚罪─ドキュメント志布志事件』(岩波書店、2009年、共著)