キーワード
タイトル
著者名
ジャンル
シリーズ
ISBN
表示件数
並び順

現在の条件をクリア

詳細検索

フクシマと沖縄

「国策の被害者」生み出す構造を問う

この本に関するお問い合わせ・感想

フクシマを問うなら、オキナワも問わなくてはならない。あわせて海の上の原発（原潜、原子力空母）も。

著者	前田　哲男著
ジャンル	社会 > 原発
出版年月日	2012/04/24
ISBN	9784874984796
判型・ページ数	4-6・208ページ
定価	本体1,600円＋税
在庫	在庫あり

この本の内容

クレジットカード決済、コンビニ決済などはこちらから

フクシマを問うなら、オキナワも問わなくてはならない。
あわせて海の上の原発（原潜、原子力空母）も。
「フクシマ以後」を生きる日本人にとって、ヒロシマ、ナガサキもさることながら、マーシャル諸島の水爆実験（ビキニ事件）を語らずにはいられない。
「無人の楽園」と化したビキニ島からのルポも含め、核と基地の現場を取材し続けて50年、福島や沖縄をはじめとする周縁の地に「国策の生贄」となることを強いるこの国のあり方を問う！

●担当編集者より

「３・11」以降、震災・原発関連の新刊書籍は多数にのぼりますが、
「フクシマ」と「オキナワ」をまとめて論じた本は本書が２冊目になるかと思います。

「フクシマ」と「オキナワ」に共通するものはなにか？　
著者は「国策の被害者」という視点に注目します。
どちらも「国策」「国益」の名の下に、負担を強いられてきた地域であるからです。

「日米安保」「米軍基地」「自衛隊」をテーマにする著者の強みは、長崎・佐世保・沖縄・ビキニをはじめとするマーシャル諸島など、まず現場に足を運び、考えてきたことです。
特に戦慄を覚えるのは、1946～58年まで、67回もの原水爆実験が行なわれたマーシャル諸島の現場ルポです。

例えば――米大統領が「安全宣言」を出し、除染を行ない、島民に帰島を呼びかけたものの、安全宣言から10年後には再閉鎖され、「無人の楽園」と化したビキニ島。

1954年３月１日、日本の第五福竜丸が被曝した水爆実験（ブラボー実験）では、実験場から190キロ離れたロンゲラップ島の人びとは３年後に帰島を許されますが、次々と白血病や甲状腺に異常が見つかり、さらに当日島にいなかった人びとも内部被曝で病を発症、ロンゲラップ島民は島を放棄せざるを得ませんでした。

「フクシマ以後」を生きる日本人にとって、マーシャル諸島の人びとにふりかかった出来事は無関係であるとはけっして言えません。

「核と人類は共存できない」
――このことを日本人は心に刻まなければならないことを、この本は教えてくれます。

2011年３月11日の東日本大震災から２カ月、日本政府の「原子力災害対策本部」が原発被災者に向けて発表した文書（５月17日付）に次のような言葉があります。

　原子力政策は、資源の乏しい我が国が国策として進めてきたものであり、今回の原子力事故による被災者の皆さんは、いわば国策による被害者です。
　復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、　国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。

この言葉にたいして、著者は「では、オキナワはどうなのか」と問いかけます。

国策としての原発推進、「国是」ともいえる日米安保体制、どちらも「国益」の名の下に、抵抗する人びとは沈黙させられ、司法の場でも「受忍論」（「国策」に従うことは国民の義務である）を強いられてきました。

50年の長きにわたり、ジャーナリストとして「日米安保」「在日米軍基地」「自衛隊」を見つめ続けてきた著者の目には、沖縄もまた、フクシマと同様、明治以来、国策に翻弄される歴史を持ち、現在も国土の０・６％にすぎない県土に在日米軍基地の七四％が押しつけられる「国内植民地」としての実態が映ります。

本書は、一見して交わることのない「フクシマ」と「オキナワ」について、「国策の被害者」という共通項を提示することで、これまで見えてこなかった（見ようとしてこなかった）
“風景”（「核兵器はＮＯ、しかし、原発はＹＥＳ」＝二重基準、「本土には基地ＮＯ、オキナワならＹＥＳ」＝欺瞞）を明らかにします。

（真鍋）

はじめに

Ⅰ　フクシマとオキナワ
　　　――「国策被害」という共通点

　　　◆佐世保・在日米軍基地で見たもの
　　　◆自衛隊も取材対象に
　　　◆フクシマとオキナワをつなぐ“補助線”
　　　◆辺野古・高江へ
　　　◆「国策による被害者」という共通点

Ⅱ　被爆国・日本の“核をめぐる奇妙な同居”
　　　――核の「軍事利用」と「平和利用」

　　　◆原爆投下の第一目標の地に生まれて
　　　◆取り壊された浦上天主堂
　　　◆「原爆から原発への道」の地ならし
　　　◆政治とメディアの結託

Ⅲ　佐世保から始まった「核」を考える旅
　　　――原潜寄港反対闘争と異常放射能事件

　　　◆原潜の入港は日本の“足の裏”佐世保に!?
　　　◆軍港という宿命
　　　◆原潜入港を前に振りまかれた「安全神話」
　　　◆核爆雷「サブロック」の持ち込み
　　　◆原子炉は安全か？
　　　◆“昭和の黒船”米原潜が佐世保港に接岸した日
　　　◆異常放射能事件発生
　　　◆「安保体制という国策」の壁
　　　◆佐世保を離れ、より広い世界へ

Ⅳ　オキナワの地に立って見えるもの
　　　――今もつづく「琉球処分」の歴史を読み解く

　　　◆復帰前の沖縄
　　　◆「国策」に翻弄される歴史
　　　◆フクシマ・普天間・辺野古・高江を貫くもの

Ⅴ　“核の実験場”ビキニで何が起きたか
　　　――「放射能の恐怖」との出会い

　　　◆ビキニ取材のきっかけ
　　　◆なぜマーシャル諸島が「核の実験場」に選ばれたのか
　　　◆核実験終了の一六年後に初めてビキニ取材
　　　◆ロンゲラップ環礁に上陸
　　　◆「ビキニ事件」の本質
　　　◆ナポータリ老人の死
　　　◆「人類の水爆死第一号」の伝説

Ⅵ　除染は不可能に近い
　　　――マーシャル諸島の現状が教えること

　　　◆「純粋に放射線による傷害を受けた史上初の社会集団」
　　　◆「ロンゲラップの教訓」から何がわかるか
　　　◆五〇〇キロ離れたウトリック島の住民にも甲状腺障害
　　　◆除染は有効だったか？

Ⅶ　太平洋に拡がる「核の植民地主義」
　　　――「核の実験場」を「核のゴミ捨て場」に

　　　◆安全な「しきい値」はない
　　　◆アメリカの実質統治下にあったミクロネシアとオキナワ
　　　◆日本は“核のごみ”をミクロネシアに捨てようとした
　　　◆「核の植民地主義」という光景

Ⅷ　海に浮かぶ原子炉
　　　――日本に“常駐”しているアメリカの原子力艦船

　　　◆３・11と原子力空母「ジョージ・ワシントン」
　　　◆「浮かぶ原発」としての原子力空母
　　　◆爆弾かボイラーか――核エネルギーの使い道
　　　◆原爆から原潜、原潜から原発へ
　　　◆横須賀に三基の“原子炉”が常駐している
　　　◆頻発している放射能漏れ

終章　「脱原発」と「脱基地」への道
　　　――「日本人の核意識」を変えられるか

　　　◆「日本人の核意識」を考える旅のなかで
　　　◆二つの光景
　　　◆原発被災者は「国策の被害者」、ではオキナワは？
　　　◆幾重にも重なる矛盾
　　　◆「三層の同心円」からなる日本人の核意識
　　　◆フクシマとオキナワを同じ視野に

　おわりに