アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
踏切事故はなぜなくならないか
クレジットカード決済、コンビニ決済などはこちらから
鉄道網が整備され、朝夕の過密ダイヤによる“開かずの踏切”問題は高架化により随分解消されています。一方で、高齢者とりわけ認知症患者の踏切事故が増えています。二年前に「目を離した責任がある」として、遺族に対し720万円のJR側へ賠償を命じた判決が大きな波紋を呼びました。
踏切事故に対して、鉄道会社から損害賠償を請求され、裁判に至っている事例も取り上げ、いまの社会が交通弱者の人たちに果たして寄り添うものになっているか検証し、踏切や鉄道のあるべき姿を考える。
本書は、研究者、新聞記者、現場の運転士がそれぞれの視点で執筆しております。
【編集者より】
高齢者の踏切事故が増えています。高齢化社会を迎えた今、踏切事故減らすためにどうしたらよいか、社会全体で考える必要があるように思います。鉄道の高架化も進んでいますが、鉄道網が発達した日本全土で、すべての踏切を廃止することは困難です。この本では、研究者、新聞記者、現場の運転士がそれぞれの視点で執筆しました。運転士の方たちに話を聞くと、人や自動車と接触する場所である踏切には、注意を払っていると答えた方も多くいました。警報機も遮断機も、改良を重ねており、事故も50年前と比べればずいぶん減ってきていることがわかりました。認知症の人の事故に対して、鉄道会社から遺族へ損害賠償を請求され、裁判に至っている事例も取り上げています。交通弱者の人たちに寄り添うものになっているか…今後も対策を立て改善していく必要があると思います。
第Ⅰ章 踏切事故とその防止対策 安部誠治
1 踏切事故の現状
2 踏切事故をなくすには
第Ⅱ章 踏切はどのように発展してきたか 吉田 裕
1 踏切の歴史
2 標識の歴史
3 踏切遮断機の発展
4 踏切警報機の発展
5 ドライバーや歩行者を配慮した踏切保安装置類の開発
第Ⅲ章 踏切事故と安全対策の歴史 吉田 裕
1 踏切事故の発生状況
2 過去に発生した主な踏切重大事故
3 近年の踏切事故
4 踏切の安全対策
第Ⅳ章 介護ができない――JR東海認知症事故 銭場裕司
介護現場に激震
お金も切符もないのに……
「何ら連絡をいただけず」
長男の妻も支援
別居でも監督責任
閉じ込めは本人を不穏に
賠償請求しない鉄道事業者も
想定外の踏切事故
厚労省元局長も意見
配偶者の責任重く
割れる法律家の評価
時代遅れの判決
第Ⅶ章 韓国の踏切事故 李 容相・鄭 炳?
1 韓国における鉄道の現況
2 韓国の鉄道事故
3 踏切事故と安全対策
第Ⅵ章 運転士にとって踏切とは 乾 和代
1 運転士の仕事
2 安全な運転
3 踏切と運転士
4 踏切事故を減少させるために
第Ⅶ章 『踏切を考える―― 現役運転士座談会』
あとがき
安部 誠治(あべ せいじ)
1952年生まれ。大阪市立大学助教授、関西大学商学部教授などを経て現在、関西大学社会安全学部教授。東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会技術顧問、公益事業学会長、消費者安全調査委員会臨時委員などを歴任し、現在、事業用自動車事故調査委員会委員、鉄道安全推進会議副会長。専門:公益事業論、事故防止論。