アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
地方国立大学一学長の約束と挑戦
和歌山大学が学生、卒業生、地域への「生涯応援宣言」をした理由(ワケ)
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社会教育・生涯教育の研究者・実践者ならではの挑戦が生み出した「人と組織の成長」の貴重な記録です!
今、地方国立大学は国と中央財界による競争と選別と淘汰の嵐に直面、予算減の一方、国の眼鏡にかなう新規事業をやれ、という圧力に呻吟。それに伴う「期限付き」という不安定雇用の教職員は増え続ける現状が続いています。
そんな「大学の自由」が揺らぐ困難な状況のなか、「和歌山大学は学生とOB・OGと地域を、とことん応援します」というミッションを掲げて真っ向から立ち向かっているのが、学長歴6年の著者です。
本書は、社会教育・生涯教育の研究者・実践者ならではの挑戦が生み出した「人と組織の成長」の貴重な記録です!
【編集者より】
国とりわけ財務省や経済産業省、また中央財界からの地方国立大学への選別、淘汰の圧力はますます強くなっています。
しかし、これからは学生の居場所と出番いっぱいの地方国立大学の時代です。
本書は現職の和歌山大学学長から、全国の学生と受験生、高校の先生、受験生を持つ保護者、同じ厳しい環境にある地方大学、地域住民への協働・連携を呼び掛ける「地方創生本流」の知と実践のドキュメントです。
著者は優れた社会教育、生涯教育の研究者であり、実践者です。普通、大学の研究者は、研究を大事に思うだけに学長になっても研究を続けますが、著者は研究活動から完全に離れることを決意し、「学長という職業」に6年間専念したのです。
窮地にある地方国立大学と、偏差値教育に振り回されてきた学生を、そして疲弊する地域社会を輝かせたい、との熱い思いと実践から学ぶことは多いと思います。
「ダメな人間、未熟な学長」の挑戦の記録
第1章 地域から世界を見通し、地域で育て、世界に発信
1ヒトを人として育てる子育て・教育・社会を
・和歌山大学の歴史と事情
・「ヒトを人間として育てる」ということ
・大学の役割と「ヒトが人間となる社会」の構想
・「家出のできるまちづくり」への挑戦
2地方国立大学長から見た(日本の)高等教育、経営、教育実践の今日的課題
3大学の地域参加と住民の学習に欠かせない自由の保障
4「新しい自分」を創りだそう
5「未来の希望」を実現できる世代へ
6不安に抗し、学び続けるために
第2章 ダメな親でもいいじゃないか
1ダメな親でもいいじゃないか
1.保護者も成長する保育所
2.子育てとまちづくり
3.「ヘルプ」と言える環境づくりを
4.これからのPTAと子育て
――情報公開と問題解決のための協力システムとしての可能性
2社会教育の原理を生かしたまちづくり・職場づくり
1.社会教育の定義
2.私の課題意識
3.ヒトが育つ(「人間化」)関係をつくる
4.ヒトが育つ関係をつくる拠点に相応しい職場・人間関係
3「使命共同体」を担う主体を探る――アトム共同保育所の実践から
1.共同保育所と「家族直下型地震」
2.アトム共同保育所における協同の思想と方法
3.「市民事業」としての保育所の事業拡大
4.労働と協同の主体の形成
5.保育所を拠点に地域にひろがる子育ての協同
6.もう一人のアンを
第3章 対談 学生と大学、社会が輝くために
太田政男・大東文化大学学長VS山本健慈・和歌山大学学長
■あとがき
山本健慈(やまもとけんじ)
1948年 山口県生まれ。77年、京都大学大学院教育学研究科(博士課程)単位取得、同年、和歌山大学教育学部助手となり、以降、講師、助教授、教授、同副学長など一貫して和歌山大学で研究・教育活動に携わり、09年8月より同学長。15年3月で退官。専門は社会教育・生涯教育。この間、自宅のある大阪府・熊取町で無認可のアトム保育所の運営で終始中心的な役割を果たし、認可化に尽力。同保育所は現在、2つの保育園に発展、「子どもも大人も育つ保育園」として有名。