アジア新風土記(90)マラッカ王国と琉球王国 - 2024.12.02
清泉女子大学地球市民学科の挑戦
著者 | 清泉女子大学文学部地球市民学科 編著 |
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ジャンル | 教育書 > 教育 |
出版年月日 | 2014/12/19 |
ISBN | 9784874985588 |
判型・ページ数 | A5・224ページ |
定価 | 本体1,700円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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大学の授業は講義を聴いてレポートを出すだけ・・・そんな講義のスタイルから学生自身の学びへと変革しようと開設した、〝地球市民学科〟。この学科の目玉は「フィールドワーク」だ。
アフリカのマラウィからフィリピン、アメリカ先住民居留地、日本の農山村まで、女子大生が未知の知へ出かけ、困難の連続のなか、自らの学びを切り開く力と考える力を養う。
フィールドワーク先へIターン就職する卒業生も出てきた。
座学では考えもしなかった世界について考え、一歩ずつ行動を起こしていく女子大生の活動を担当教員10名が執筆。
【編集者より】
夏休みに2週間ほど、先生とともに、または自分たちだけでフィールドに出かけて学ぶ。しかも1年間の学びだけでなく、1年間のタームが終わった後も、通常英語と日本語両方の報告書作りのために、メンバーで協同作業をするというのです。フィールドワークはあちこちの大学で広がりつつあるようですが、1つのフィールドワークに教員が1年半ほどの時間をかけて十数名の学生とかかわり、学びを進めていく清泉女子大学のスタイルは、他とは一線を画しています。
また、卒業生の進路も様々です。一般の企業に入る学生も多くいますが、中には、青年海外協力隊に参加したり、本にも出てくる「地域おこし協力隊」隊員としてフィールドワークで訪れた地に定住しその地に就職したり…といった多様な生き方をしているようです。
フィールドワークと言えば人類学が思い浮かびますが、地球市民学科のフィールドワークは、「地球市民としての生き方を模索する学びのかたち」としておこなわれます。女子大生たちが土に触れ農作業をしたり、調査のために英語でインタビューしたり、プレゼンをしたり、ホームステイをさせてもらったり……学生一人ではできないことを、周りのサポートなどで後押ししてもらいながら、だんだんと何でもやってみることを習得していくようです。
アフリカのマラウイに出かけた学生の言葉を紹介します。「1日2ドル以下で生活している人たちが多いと文献で読んだが、2ドルは300クワッチャだから、1日過ごすのは難しいことでないと感じた。5、10クワッチャくらいで野菜は買えるような物価だから」
イメージで「貧困」を捉えていた学生が、ホームステイを含めた実体験から、賃金のみで「貧困」だと決めるのはおかしいと思った、そのことを考える学びこそが「地球市民として生きるためのフィールドワーク」なのではないでしょうか。
第1章 学生たちのマラウイ 鈴木 直喜
1 はじめに
2 授業の始まり
3 マラウイという国
4 フィールドワーク中の体験
(1)マラウイまでの長旅
(2)政府機関訪問
(3) HIV/AIDS患者と学生の意識
(4) 野ネズミとの遭遇
(5)ホームステイ
5 振り返って
第2章 スタディ・ツアーの「メッカ」で
調査・交流をどう設計するか―フィリピンでの経験から 大野 俊
1 はじめに
2 首都マニラ以外のフィールドをどこにするか?
3 20数カ所訪問のタフ・ワーク
4 帰国後の報告書作成
5 フィールドワークの事後インパクト
6 巨大台風被災のレイテ島をフィールドワーク先に選ぶ
7 若者交流と社会貢献に力を入れる
8 学部生のフィールドワークは体験重視で
9 おわりに
第3章 「全体性の視点」の大切さ―ブータン研修の成果と課題 真崎 克彦
1 はじめに
2 フィールドワークの構想
3 フィールドワークの実際
4 フィールドワークの成果
(1)現地社会についての見聞
(2)自らの生き方についての視野
5 フィールドワークの課題
6 まとめ
第4章 異文化・異国の現場に立って学び、課題を見つける ――インド 塩谷 惇子
1 まえがき - 現場に立って学ぶ
2 カリキュラム外の自発的フィールドワーク企画
3 地球市民学科カリキュラムとしてのフィールドワークの開始
(1) 地球市民学科インド・フィールドワーク第1回(南インド)
(2)西南インド―出会いの喜びと感動の中での問いかけ
(3)北インド・南インド―ヒンドゥー教と仏教の聖地で
4 地球市民学科カリキュラムとしてのフィールドワークの進化
(1)中央インドフィールドワークガンジーの精神を辿る
(2)南インドフィールドワークインド伝来キリスト教の足跡を辿る
(3)西インドフィールドワーク教育の営みを知る
第5章 アメリカ先住民との絆
――ワシントン州コーヴィル先住民居留地 相亰 美樹子・松井 ケティ
1 はじめに
2 フィールドワークの実施地
3 アメリカ先住民の歴史
4 現代のアメリカ先住民の生活
5 フィールドワークの目的と活動内容
6 フィールドワークが学生に与えた影響
7 居留地の先住民にとっての学び
8 注目されるサービス・ラーニング
9 サービス・ラーニングから見たフィールドワーク
10 今後の課題と展望
11 おわりに
第6章 自然から学び次世代社会を構想する
――ニュージーランド 山本 達也
1 頭と体で理解する
2 自然と現代社会との関係性を再考する
3 「目に見えないもの」から学ぶ
4 「自然」が何だかわからない
5 マオリの「知」に学ぶ
6 それぞれのライフデザイン
第7章 学生とともに学ぶ
――海洋部東南アジアと日本の山村(豊根村)のフィールドワークから 辰巳 頼子
1 はじめに
2 感謝と尊敬-フィリピンの農村と漁村を歩いて(2006年度)
3 暮らしのなかの宗教、暮らしのなかのフェアトレード
―インドネシアの三つの村から(2008年度)
4 祭りの魅力、土地の魅力―豊根村でのフィールドワーク
5 おわりに
第8章 農村に親しむ――茨城県常陸太田市における10年の実践 伊藤 達男
1 はじめに
2 フィールドワーク開始のきっかけと経過
3 授業の意図と構成
4 フィールドワークの過程
5 参加学生たちの感想
6 受け入れ地域への波紋
7 おわりに
第9章 フィールドワークのインパクトと「地域おこし協力隊」 実吉 典子
1 はじめに
2 常陸太田市地域おこし協力隊「ルリエ」
3 基盤となった里美地区フィールドワーク
4 「つなぐ会」の結成
5 「ルリエ」と、大学の授業としてのフィールドワーク
6 結語に代えて
【卒業生エッセイ】フィールドワークから地域おこし協力隊へ、
結婚を経て常陸太田市職員として定住へ
佐川真衣(旧姓:野嵜)
清泉女子大学地球市民学科
経済、社会など様々な分野でグローバル化が進む21世紀に地球的視野を備えて国内外で活躍できる女性を育むため、清泉女子大学創立50周年にあたる2001年に新設された。現代性と実践性重視の観点から、「地球社会関連科目群」、「多文化理解関連科目群」、「フィールドワーク」をカリキュラムの三つの柱としている。特にフィールドワークは、座学による知識の習得にとどまらず、国内外の現場での知見を踏まえて新たな見方を提示し、場合によっては実践に発展させるための必修科目群と位置づけ、全学科生が履修する。教員と在学生に加えて卒業生との親密なネットワークも学科の特徴である。