アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
痴漢えん罪にまきこまれた憲法学者
警察・検察・裁判所・メディアの「えん罪スクラム」に挑む
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2011年5月3日の「憲法記念日」、憲法学者の著者は「痴漢容疑」(道幅いっぱいに歩行中の女子高生6名の脇を通り抜けた際にぶつかる)で広島県警に任意同行と言われながら30分後いきなり「現行犯逮捕」された。逮捕後3日目の5月5日に釈放され、約三カ月後の8月に不起訴処分となった。
本書は、法律の専門家である憲法学者が、逮捕から釈放されるまでに警察から受けた人権無視の非道な処遇を克明に記録するとともに、マスメディアに実名で報道され、言語に絶する被害を受けた体験がもとになっている。
自らの体験を元に、「えん罪」の恐怖と「報道被害」の実態を明らかにし、「えん罪」の根絶とメディアの自省を訴える!
「痴漢えん罪」をテーマにした本はたくさんありますが、本書のように、憲法の研究者が事件に巻き込まれたのは、極めて稀なケースではないでしょうか。
「えん罪」に関する論文を書いていた著者ですら、逮捕直後は「ウソの自白」を考えたといいます。
被疑者・被告人は裁判で有罪が確定するまでは無罪なものとして扱われるという「無罪推定の原則」が一切通用しない警察の対応について、著者は自らの体験を克明に記しました。また、新聞・テレビが実名で報道したために、留学取りやめ、謹慎処分など、精神的苦痛・経済的損失は計り知れないものとなってしまいました。
本書は、法律の専門家が「痴漢えん罪」に遭うという、空前絶後の体験をもとにして書かれた貴重な本であり、この本を通して、多くの人に、「えん罪」の恐怖、「報道被害」の実態を知っていただきたいと思っています。
Ⅰ 憲法学者のえん罪体験記
1 逮捕から釈放されるまで
◆逮捕(五月三日)――「任意捜査」がいきなり「現行犯逮捕」に
◆二日目(五月四日)――「あなたが犯人だと思っている」という刑事
◆三日目に釈放(五月五日)――一文無しで検察庁を放り出される
2 激変した生活
◆釈放後の被害の状況
◆警察に対して国家賠償訴訟を考えたが……
◆思い知らされたメディアの体質
Ⅱ 刑事手続に関する憲法上の権利
1 大日本帝国憲法での刑事手続
2 日本国憲法での刑事手続の内容
3 刑事手続の現状 00
4 最近の代表的なえん罪事件
◆布川事件
◆足利事件
◆氷見事件
◆志布志事件
◆大阪地裁所長襲撃事件(通称「オヤジ狩り事件」)
◆引野口事件
◆郵便不正事件
◆競艇選手神戸痴漢冤罪事件
Ⅲ 捜査機関・裁判所・メディアの何が問題か
1 捜査機関に関して
◆身柄拘束に関して
◆取調べ
◆自白
◆警察・検察は事件、証拠をでっち上げる
◆捜査機関の体質
2 裁判所に関して
◆令状主義の形骸化、濫用
◆「無罪推定の原則」の放棄
◆非常識な事実認定
◆「誤判の陰に誤鑑定あり」
3 メディアに関して
◆えん罪の共犯者、メディア
◆犯人視報道
◆実名報道
4 弁護士に関して
◆足利事件一審段階までの弁護活動
◆氷見事件での弁護活動
5 えん罪被害の悲惨さ
◆免田栄さんのえん罪被害の状況
◆生活が破壊される――日弁連のアンケートから
◆その他の事例
Ⅳ えん罪を防ぐには
1 捜査機関が取り組むべきこと
◆憲法・刑事訴訟法の理念の徹底
◆ノルマの廃止
◆取調べの可視化
◆代用刑事施設(いわゆる代用監獄)の廃止
◆証拠の全面開示
◆身柄拘束場所の改善
◆警察、検察への個人責任追及制度の確立
◆検察官上訴の廃止
2 裁判所に関して
◆裁判官の意識改革
◆判検交流の廃止
◆弁護士を裁判官に採用すべき
3 メディアに関して
◆犯人視報道の改善
◆原則匿名報道の採用
◆法学説の役割
4 弁護士に関して
◆なぜ刑事手続で弁護士が重要なのか
◆刑事弁護士支援体制の強化
おわりに 00
【資料編】「被疑者ノート」(抜粋、日本弁護士連合会発行)
日本国憲法下における主なえん罪事件