アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
日中の経済関係はこう変わった
対中国円借款30年の軌跡
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外務省経済政策専門家が、「政冷経熱」といわれる日中関係の中で、対中国円借款の果たしてきた役割や、その終了決定の背景を検証することを通して、この30年間の日中関係の変化を明らかにする。
1.円借款とは何か
ODAを定義する
日本のODAの実態
──円借款/無償資金協力/技術協力
2.本書のテーマと視点
対中円借款終了の背景分析
日中関係の変化を考察
対中ODAを考えるための視点
3.本書の構成について
第Ⅰ章 対中円借款開始への歩み
1.中国の外資政策変更
外資政策変更の背景
*国際情勢の変化
*中国国内情勢の変化
*中国の資金需要の拡大と資金援助
政策変更を推進させた鄧小平
*政策変更のアドバルーン・羅元錚論文
*意識改革を呼び込んだ海外視察団
*外資提供者=日本への期待
外資導入と日本
*米ソとの関係と日中協力
*ODA受け入れへの関心表明
*新たな外資政策の確立
2.対中円借款開始の背景
日本の円借款利用の提案
*日本の経済界の思惑
*日中長期貿易協定の締結
*中国の外貨不足と円借款提供の必要性
中国側の反応
*円借款に対する態度の変化
*円借款に関する日本側の説明
*円借款の正式要請
諸外国の懸念への配慮
*中国のDACリスト入り
*欧米諸国の懸念
*ASEAN諸国の懸念
*ソ連の懸念
日本国内での意見調整と大平首相の決断
3.対中円借款=日本の政策意図
経済利益目的の観点
*資源エネルギーの確保
*対中進出の促進
政治外交目的の観点
世界を見据えた広域目的の観点
第Ⅱ章 検証・対中円借款小史
1.日中関係発展期(一九八〇年代)の対中円借款
第一次対中円借款(一九七九年度─一九八四年度)
*中国のプラント契約破棄問題
*日本の歴史教科書問題
第二次対中円借款(一九八四年度─一九八九年度)
第三次対中円借款(一九九〇年度─一九九五年度)
2.日中関係動揺期(一九九〇年代)の対中円借款
天安門事件と対中円借款凍結
*天安門事件の影響
*対中円借款の凍結
*凍結解除
第四次対中円借款(一九九六年度─二〇〇〇年度)と中国の核実験
*総書記と天皇の相互訪問
*中国核実験と対中無償資金協力凍結
*核実験停止宣言と対中ODA再開
存在感が薄まり始めた対中円借款
3.中国の経済建設と対中円借款
インフラ整備
──交通運輸/電力/電信電話/農業水利/都市建設
GDP押し上げ効果
第Ⅲ章 対中円借款終了の決定まで
1.二〇〇四年秋までの状況
日本国内の対中ODA批判
援助方式ごとの状況
*もはや限界が近づいた円借款
*やはり限界に来た無償資金協力
*むしろ発展が望まれる技術協力
「相場観方式」による円借款供与額決定とその反省
2.中国の円借款「卒業」へ向けた動き
町村外相、小泉首相の発言
参議院ODA調査団報告書
中国側のODA「卒業」に対する反応
*中国首脳の発言
*中国政府内の意見
*中国メディアによる批判
*「卒業」発言への反発
3.対中円借款の終了決定
外務省内での検討
日中間での水面下の調整
対中ODAの方向性確定
第Ⅳ章 対中円借款終了決定の背景
その1【費用対効果の不均衡】
1.対中ODAの政治経済上の費用
経済上の費用分析
政治上の費用分析
*国内の反中・嫌中傾向
*国会議員への対応
*日中政府間での懸案化
2.対中ODAの政治経済上の効果
経済上の効果の考察
*「開発援助」としての効果
*「外交ツール」としての効果
政治上の効果の考察
3.対中ODAの費用対効果の分析
限界効果の減少
限界費用の増大
費用対効果の不均衡
第Ⅴ章 対中円借款終了決定の背景
その2【なぜ二〇〇五年春だったのか】
1.反中・嫌中ムードの高まり
2.二〇〇四年度対中円借款供与額決定との関係
3.町村信孝外相の存在
対中ODAに関する政策セット
前任外相の対中ODA観
*親中派の田中真紀子外相
*民間出身大臣の川口順子外相
〝主張すべきことは主張する〟町村信孝外相
第Ⅵ章 ポスト円借款時代の日中関係
1.日中関係の変化と対中円借款
対中円借款開始当時の日中関係─政府主導の関係発展期
現在の日中関係─民間主導の相互依存関係
歴史的使命を終えた対中円借款
2.現在の日中関係の特徴
3.ポスト円借款時代の日中関係
日中関係の展望
*追われる日本、追う中国──不安定な日中関係
*日中両国に求められる努力
*日中両国政府の取り組み状況
今後の対中ODAに期待される役割
*今後の対中ODAの考え方
*小規模協力中心の対中ODA
*日中共同での第三国支援
さらなる日中協力のために
日中関係現代史=略年表
エピローグ