アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
反米大統領チャベス
評伝と政治思想
チャベス・ベネズエラ大統領は、国内の特権富裕層を敵視し、貧困層の救済を政治課題とする。また、外交においては、南米諸国に次々に誕生する「左翼」政権の指導者との親密な協力関係を築き、「米国抜き」の、EUに匹敵する「南米共同体」構想を推進している。
その強引とも言えるチャベスの戦略を支えるのが、豊富な埋蔵量を誇る石油資源である。
先住民と黒人の血を引くチャベスは、陸軍将校時代にクーデターを起こすが失敗、2年間の刑務所生活をおくる。出獄して4年、ついに大統領に就任するが、その後も、石油利権を手放そうとしない特権富裕層を中心とする反政府勢力との政治闘争は続いた。国軍によるクーデターや一カ月以上も続いたゼネストの危機を乗りこえ、ついにベネズエラ石油公社の完全国営化に成功、石油の輸出で得た外貨収入を、国内貧困層の医療・教育・福祉にまわし、南米諸国との資源外交を展開している。
アメリカ主導の新自由主義に真っ向から異議を唱え、独自路線を貫く南米の指導者の素顔に迫る!
第1章大志を抱いた野球少年
祖母の作った菓子を路上販売
野球と読書のバリナス時代
社会矛盾に目覚めた陸軍士官学校生
“祖国独立の父”シモン・ボリバル
軍内部に秘密組織を結成
第2章反乱軍将校から大統領へ
一九九二年クーデター
民衆を動かした言葉
収監された兵舎に無数の“チャベス詣で”
武力闘争を捨て、民主的「革命」路線へ
出獄・選挙運動
一九九八年大統領選
第3章反チャベス勢力との死闘
最初の仕事は憲法改正
格差是正キャンペーン「ボリバル2000計画」
対外債務は放棄せずに再編
新憲法発布
教育予算の倍増、一〇〇万人の就学計画
政情不安
反チャベス包囲網
側近の離反
二〇〇二年四月クーデター
軍の離反
身柄拘束
クーデター政権の崩壊
空挺部隊による救出
大統領復帰
息を吹き返した反政府勢力
第4章赤色と青色に分断されたベネズエラ
反政府勢力のゼネスト
石油資源の国有化と富の公平な分配
反政府勢力の方針転換
赤色と青色に分断されたベネズエラ
チャベス派の勝因
「農地解放」を強行実施
第5章チャベス政治の行方
資源ナショナリズム
石油カード
チャベス政権を敵視するアメリカ
虎の尾を踏まない対米戦略
米国抜きの南米共同体構想
キューバ・カストロ議長との蜜月関係
第三世界の結束はかる外交
大統領が一人で仕切るテレビ番組
賛否両論のメディア戦略
民衆の「空腹」が「革命」前進の原動力
おわりに
●主要参考文献
●ベネスエラ史=略年表