アジア新風土記(93) マカオの返還25年 - 2025.01.16
若き一読書人の思想の遍歴
戦争の時代(1937~1946)
東京高等師範(現・筑波大)卒業と同時に軍隊へ──。あの戦争の時代を生きた一青年の読書でたどる精神史。
日中戦争から太平洋戦争へ、すべての学生が戦場への道を宿命づけられていた時代、詩人の感性をもつ一青年は、軍国主義が深まりゆく中、どんな本を読み、どんな作家・詩人・思想家に心を惹かれたのか──。
当時の学生生活、兵営での軍隊生活を交えながら、愛読した小説・詩・思想書の内容を紹介しつつ、それをどう読んだかを伝える。
体験を通して語る昭和10年代の文学・思想史!
少年の理想主義と佐藤紅緑 ◆「農民芸術概論」との出会い
教師・賢治に学ぶ
松田甚次郎『土に叫ぶ』 「満蒙開拓青少年義勇軍」のこと
島木健作『生活の探求』 ◆島木のストイシズムと転向
本庄陸男『石狩川』 ◆本庄陸男の教育思想
農民的生活者・島崎藤村 ◆『夜明け前』の悲劇
亀井勝一郎『人間教育』 ◆求道的遍歴者の辿った道
ゲーテの時代 ◆『ファウスト』から学ぶ
読書放浪 ◆河合栄治郎のこと
太宰治への反発と魅力 ◆太宰作品の評価
内村鑑三との出会い ◆鑑三の思想と信仰
倉田百三『愛と認識との出発』 ◆倉田の思想的終局
和辻哲郎『古寺巡礼』 ◆和辻の日本倫理思想
柳田民俗学との出会い ◆柳田思想に対する私見
日本民芸館と『雑器の美』 ◆柳宗悦と民芸運動
榊山 潤『歴史』を読む ◆『歴史』が書かれた時代
斎藤茂吉『赤光』の衝撃 ◆戦争と戦後の茂吉
詩人高村光太郎 ◆光太郎の戦争責任
Ⅱ アジア太平洋戦争へ──20~23歳
第二次世界大戦勃発の頃 ◆「紀元二六〇〇年祭」の年
萩原朔太郎『日本への回帰』 ◆詩人朔太郎の悲劇
日米開戦前夜の文化界
流離孤愁の詩人・三好達治 ◆達治の「天皇戦争責任論」
保田與重郎『日本の橋』との出会い ◆「日本浪曼派」とはなんであったか
折口信夫『古代研究』 ◆迢空と「神 やぶれたまふ」
土田杏村『文明は何處へ行く』 ◆杏村と自由大学
『八木重吉詩集』 ◆重吉の生と詩
山村暮鳥『萬物節』 ◆暮鳥の生とその世界
伊藤信吉『現代詩人論』 ◆詩人伊藤信吉
草野心平詩集『絶景』 ◆心平と賢治の世界を見つめて
羽仁五郎『ミケルアンヂェロ』 ◆戦後の羽仁五郎と図書館運動
家永三郎『日本思想史に於ける否定の論理の発達』 ◆家永氏の「教科書検定訴訟」
会津八一『鹿鳴集』 ◆人間会津八一
岡倉天心『東洋の理想』 ◆天心の評価をめぐって
「ぐうたら学生日記」
「ぐうたら学生日記」追記 ◆映画に明けくれた青春
日米開戦の年 175
一九四一年一二月八日(1)
一九四一年一二月八日(2)
一九四一年一二月八日(3) ◆『中央公論』誌から
最後の学生生活を迎える──一九四二年(1)
繰り上げ卒業の年──一九四二年(2) ◆最終学年生活
別れの日々──一九四二年(3)
読書にこころ急く──一九四二年(4) ◆『萬葉集の精神──その成立と大伴家持』
文芸報国運動のこと──一九四二年(5)
Ⅲ 帝国陸軍の内側で──23~25歳
東部第三部隊入隊──初年兵哀歌(1) ◆内務班の生活
東部第三部隊入隊──初年兵哀歌(2) 228
東部第三部隊入隊──初年兵哀歌(3) 234
転生の時──兵営からの報告 ◆転身雑感
前橋陸軍予備士官学校
陸軍気象部へ転属
甫守 伝の陣中通信
陸軍少尉という身分 ◆水上館で
「近代の超克」論 ◆まだつづく「近代の超克」論
西田哲学批判の風潮 ◆寸心・西田幾多郎
見捨てられた一冊の本
台湾沖航空戦のウソ ◆特別攻撃隊の衝撃
風船爆弾の基地、上総一ノ宮
同期の桜たち(1)──木村少尉のこと
同期の桜たち(2)──原田義人のこと ◆「なよたけ」◆「沖縄決戦に寄する歌八首」
空爆被災
決戦下で松陰を読む ◆京城に飛ぶ
原爆、そして敗戦 ◆フィヒテ『ドイツ国民に告ぐ』
別離、復員
Ⅳ 敗戦直後・虚無と絶望の底で──25~26歳
『正法眼蔵随聞記』を読む
三木清・その死
パスカル瞑想録(パンセ)
『新生』発刊の頃
天皇の戦犯問題と戦争責任
戦争責任と公職追放
はじめての冬
天皇巡幸のころ
「赤蛙」の志
教養主義、皇国史観の崩壊
軍歌の戦争責任
美術の戦争責任
旧制中学の軍事教育
「第二の青春」も遠く
『中央公論』復刊と羽仁五郎「福沢諭吉」
津田史学と天皇制