アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
北の詩人小熊秀雄と今野大力
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ともに北海道の貧しい家に生まれ、小熊秀雄はきらめく才能で珠玉の詩と童話を生み、今野大力は早熟の天才的詩人としてデビューしながら、社会変革の運動に投じて短い生を閉じる。日本の冬の時代を駆け抜けた二人の生涯を、新資料をまじえ、作品を通して描く!
旭川では、二人は当然、郷土の生んだ詩人として、ともに詩碑を建てて記念され、 心ある人たちによって顕彰されてきました。 ところがどうしたことか、同時代を生き、かつ生涯親交を結んでいた小熊秀雄と 今野大力をふたりあわせてとらえ、語ることはほとんどなされないできました。 しかし、同じ北海道開拓の二世世代として生まれ、共通の風土、共通の時代状況 の中で生きた二人なのです。両者を重ねあわせてとらえてこそ、より深い陰影を たたえた詩人の肖像を浮かび上がらせることができるのではないか――。 そう考えてきた私は、まだ体力の残されているうちに、このぬきんでた個性を持つ 二人の詩人の名前を並列した本を、どうしても書きたいと思ってきたのでした。
病床の今野大力へ、小熊秀雄の献辞より
小熊秀雄の登場
やってきたのが、なぜ旭川だったか
一九二三(大正十二)年「近代演劇」公演
第Ⅱ章 小熊秀雄・今野大力、二人の出会い
重井鹿治と梅原松成、そして平岡敏男
今野大力の生い立ち――彼ら北海道二世世代
一九二〇年代、今野大力と平岡敏男
小熊秀雄・今野大力の出会い
今野大力と名寄・内淵のアイヌ住民
黒珊瑚署名記事「北都高女生山田愛子が自殺するまで」
第Ⅲ章 旭川新聞、小熊秀雄の童話
ヒデヲ「オトギバナシ 自画像」
「自画像」を巡って ─小熊秀雄と昇季雄
「焼かれた魚」のこと
「焼かれた魚」はどう読まれてきたか
小熊秀雄、画家高橋北修と初の上京
第Ⅳ章 小熊秀雄、新ロシア文学との出会い
小熊秀雄と昇季雄、兄曙夢
小熊秀雄にとっての新ロシアの詩人
露西亜農民詩人ヱシヱーニンの自殺
蔵原惟人「詩人セルゲイ・エセーニンの死」より
蔵原惟人「過去の芸術を何う観る」より
小熊秀雄はソビエト・ロシアに何を見たか
それぞれのエセーニン観
セルゲイ・エセーニンとその後の小熊秀雄
第Ⅴ章 小熊・今野、労農・革新運動高揚の中で
一九二五(大正十四)年ころの今野大力
北村順次郎「観念的追想論の基調如何 今埜紫藻氏におくる」
今埜紫藻「哀れなる盲蛙に与へる―北村順次郎君に答へて―」
「〝名寄新芸術協会〟の記憶」より
海野元吉(小熊秀雄)の登場
第Ⅵ章 今野、小熊それぞれの上京
旭川第一回メーデーと小熊秀雄
今野大力「秩序紊乱の作家」
「からたちの白い花咲く墓場近くから」
今野大力、黒島伝治との出会い
小熊秀雄上京、今野・鈴木との同居
小熊秀雄、〝池袋モンパルナス〟へ
第Ⅶ章 今野大力の旭川帰省・療養
「待っていた一つの風景」
松崎豊作と〝山宣〟演説会
四・一六事件と今野大力
「樺太山火の放火犯人は誰か?」ほか
宮本吉次君著「啄木の歌とそのモデル」と「啄木を問題として」
北川武夫署名の「文芸時感」
第Ⅷ章 今野大力「小ブル詩人の彼」をめぐって
一九三〇年前後の小熊秀雄
「小ブル詩人の彼」はなぜ書かれたか─その時代背景─
友人平岡敏男、鈴木政輝はどう読んだか
小熊秀雄はどうであったか
本庄陸男と今野大力
第Ⅸ章 大力・久子の結婚、その生涯
今野大力の短歌より
大力・久子の出逢いと結婚
久子の上京
宮本百合子・壺井栄の小説から
「戦旗社」の今野大力
宮本百合子「小祝の一家」
壺井栄「廊下」(初出『文芸』/一九四〇・二月号)
今野大力の死
宮本百合子「朝の風」の久子をめぐって
第Ⅹ章 小熊秀雄「飛ぶ橇」─アイヌ民族の為めに─
「飛ぶ橇」と樺太・泊居
詩集「飛ぶ橇」をめぐって
「アイヌ人イクバシュイ、日本名四辻権太郎」
イクバシュイ・権太郎と旭川近文アイヌ民族
若い山林検査官はなぜ無名なのか
再度、小熊秀雄と近文アイヌ民族
サブタイトル「―アイヌ民族の為めに─」
「飛ぶ橇」補遺
第章 小熊秀雄、小林葉子宛書簡から
「馬の胴体の中で考えていたい」
小林葉子「小熊秀雄さんとの出会い」より
「全集」所載の小林葉子宛書簡の異同について
8・9付小林葉子宛書簡から
9・13〝全集未掲載〟書簡から
昭和十三年11・17から翌年1・16書簡まで
小林葉子「小熊秀雄さんとの出会い」に関連して
第章 今野大力「一疋の昆蟲」を読み解く小熊秀雄
「一疋の昆蟲」をどう読むか
小熊秀雄「北海道時代の今野大力」
それでも詩作を忘れなかった今野大力
あらためて小熊秀雄と今野大力
追記「徴発」
あとがき
金倉義慧
1934年、北海道深川に生まれる。高校教師(国語科)を定年退職後、地域の歴史を掘り返し、ノンフィクション作品にまとめてきた。著書:『遥かなる屯田兵』『旭川・アイヌ民族の近現代史』など。