アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
新採教師はなぜ追いつめられたのか
苦悩と挫折から希望と再生を求めて
希望に燃えて教壇に立ったばかりの三人の女性教師がわずか半年で自ら命を絶った。
なにが彼女らを追いつめたのか?
かつて、子どもたちの話題やにぎやかな笑い声に満ちていた職員室は、あまりの多忙と些末な書類作成に追われて余裕を失い、孤立と沈黙の空間となっている。
今、教育現場を取り巻く過酷な現実を洗い出し、再生への道を探る!
Ⅰ 還らないいのち──新採教師三人の死
二人の新採教師自殺事件に即して考える 〔弁護士〕川人 博
1、新宿区立小学校Aさんのケース
「単級学校」で十分なサポートもなく
攻撃的な親の言動に苦しむ
校長、副校長の言葉にさらに追いつめられて
労災として認められないという地公災の結論に不服申し立て中
2、西東京市立小学校Bさんのケース
万引き事件で理不尽な対応を迫られて
超過勤務は一カ月に一〇〇時間強
「休んだら本採用にならない」という恐怖の中で
「どうしてこれが公務災害ではないのか」という例がいっぱい
3、質問と応答
認定されにくい自殺による教員の公務災害
労災認定、一番悪いのが地方公務員
理不尽な保護者の言動より管理職の姿勢こそが問題
保護者の過剰な要求に学校は毅然とした態度を!
若い人たちが行き詰まった時、支えてくれる場とは?
木村百合子さんを死に追いやったもの 岩井 一夫
親にとって娘の死
子どもたちにとって教師の死
採用からわずか半年の死
「おまえの授業が悪いから、Aが荒れるんだ」とののしられて
「アルバイトじゃないんだぞ。ちゃんと働け」という叱責
百合子さんが送ったメールから見えるもの
クリスチャンとしての百合子さん
裁判の現在・百合子さんの死は「個人的な問題」なのか!
Ⅱ 〔手記〕新任教師・試練の日々からの出発 《手記①》若い先生、ゆっくり成長しましょう 平井 優子
《手記②》「困難・苦悩」の中に「希望と勇気」を見つけて 石垣 雅也
《手記③》夢を追いつづけて 五十嵐 百恵
〔解説〕若い教師たちの挫折と再生をめぐって 佐藤 博
「車輪の下」の教師たち
荒れる教室と子どもの「異変」
広がる教師への「不信の視線」
過重な労働と教職ストレス
責め立てる「関係」と沈黙の職員室
挫折を越える再生への回路
「未熟」のなかにある希望
Ⅲ なにが教師を追いつめるのか──遺族を迎えての合評会の討論から
合評会の討論を紹介するにあたって
ご遺族の発言から
寝ていても夢に見るのは子どもの夢
不安抱え攻撃する親、その矢面に立たされるのが若い人
競争煽られ、どう自分の身を守るかという中で
六時台に出勤、やってもやっても終わらない仕事
「もし僕に何かあったら」と父に伝えた日
守ってくれる人がいないつらさ
今の青年層に染みついている〝自己責任〟という足かせ
教師をしっかりサポートする体制をつくってほしい
「何とか死なないでやろうね」が合い言葉
おじさん、おばさん先生で若い人を支える職場態勢
同期の人を自殺で亡くしてから続けてきた私たちの活動
娘は小学校の教師という仕事を恨んではいない……
Ⅳ 教師の仕事の今日的難しさとそれを支えるもの
あらためて「新採教師はなぜ追いつめられたのか」を考える 久冨 善之
1、遺族の「思い」の深さに触れて
2、新採教師は特別に苦しい?
3、子どもとの関係が難しい
4、父母との関係づくりの性格変化
5、管理職・同僚関係がかえって追いつめる
6、支えは職場の同僚か、学校外の仲間か
7、「低い信頼」から一歩一歩
8、「教師として安全・健康に働く権利」の確立をめざして
9、いま、「教師」をめぐる世論と政策指向の転換期
〔コラム〕若い教師たちのサークル紹介
ダボハゼの会(北海道)/K4(北海道)/らいおん例会(青森)/WA会(千葉)/F5(千葉)/虹の会(千葉)/千葉青年教職員の広場(千葉)/教育実践ゼミ(東京)/若手教育実践研究会(東京)/学びのWA(東京)/教科研・教師部会(東京)/社会科ゼミナール(東京)/紙ふうせん(神奈川)/(仮)センセの放課後(滋賀)/エデュカフェ(京都)
あとがき