アジア新風土記(89)マラッカ - 2024.11.15
ある軍国教師の日記
民衆が戦争を支えた
盧溝橋事件から太平洋戦争をへて敗戦までの8年間、一女学校教師が一日も欠かさず書き残した日記をもとに、「銃後」と「前線」との交信、出征兵士の見送り、空襲下の「御真影」の奉護など、戦争に翻弄され、逆にまた戦争を支えた民衆の姿を浮き彫りにする!
プロローグ
──浅見真吉の「日記」とその経歴
1 「はけ口」を日記に求める
2 父の生育歴とその後
Ⅰ 日中全面戦争に突入する
──昭和一二〈一九三七〉年
1 「支那は始末におえない国だ」
2 “銃後の支え”があってこそ
●甥、正一の出征におけるハレの儀式
●久喜町応召兵士、久喜町出征兵士後援会など
●戦時下の女学校、女学生
●戦時下の日常と家庭生活の面
●浅見正一、太原攻略戦に参加
3 南京占領と泡立つ銃後
●兄の死病の進行とともに
●南京陥落、兄の死、「愛国行進曲」
Ⅱ 中国戦線の拡大と「銃後」
──昭和一三〈一九三八〉年
1 前線と銃後、甥と叔父
●「北支」に「新政府」
●正一の部隊長への手紙
2 妻の死と憂愁の秋
●妻ラク、実家への帰省
●亡くてぞ人の恋しかりける
3 武漢攻略戦と真吉の日常
●正一、漢口攻略戦に参加
●武漢占領と真吉の寂寥
●さらば昭和十三年よ
Ⅲ 泥沼化する戦争、窮迫する国民生活
──昭和一四、一五〈一九三九、四〇〉年
1 昭和一四年──「国際情勢は複雑怪奇」
●近衛の内閣投げ出しと、平沼内閣
●浩の学芸会、物価高、浅見正一の帰還
2 昭和一五年──「紀元二千六百年」
●神がかりの国家像、「八紘一宇」
●「バスに乗りおくれるな」
●浅見真吉、再婚
Ⅳ 日米開戦、緒戦の勝利と戦局の転換
──昭和一六、一七〈一九四一、四二〉年
1 戦争の足音を聞きつつ、日常はつづく
●子供の相手、闇、故郷懐旧、その他
●長男・隆司は陸軍士官学校、浩、輝男は国民学校へ
●御前会議、「関特演」での大動員
●されど楽しい夏休み
●忍びよる〝運命の日〟
2 開戦と国民的熱狂、舞い上る天皇
●再び泡立つような雰囲気が
●浅見真吉におけるハレとケ
3「戦果の放送が遠のいた」
●事実を発表しないのはいけない
●知らされざる転期の秋
●ガダルカナル戦、その他
Ⅴ 不安と疑問の霧につつまれて
──昭和一八〈一九四三〉年
1 大本営用語「転進」と「玉砕」の登場
●「決戦の年」、「馬鹿者」校長と後妻
●山本五十六戦死、アッツ島「玉砕」
2 「絶対国防圏」は決めたけれど
●軍国教師の戦時生活
●あいつぐ応召・出征と「無言の凱旋」
●大本営発表に不安、疑問がわく
Ⅵ 敗色深まり、空襲はじまる
──昭和一九〈一九四四〉年
1 「南太平洋の決戦苛烈凄愴」
●ある中学教師から聞く内密の時局談
●マーシャル諸島からマリアナ諸島へ
●食い物の問題、後妻の無理解
●長男・隆司、陸軍航空士官学校卒業
●三男・浩、浦中三年生、後妻と衝突、校長はクビ
2 サイパン「玉砕」、中学生、女学生は通年勤労動員に
●「海軍はどうした、陸軍はどうした」
●中学三年の浩は通年勤労動員、久喜高女は〝学校工場〟に
●小磯内閣、戦果誇大発表の例
3 忍びよるニヒリズムの影
●浅見隆司、前線へ
●特攻攻撃、空襲の日常化
●浩、授業に焦がれる
Ⅶ 敗戦への道、空襲の日々
──昭和二〇〈一九四五〉年夏まで
1 東京大空襲、硫黄島「玉砕」、沖縄失陥
●浩も学徒も御苦労なこと
●東京大空襲、天皇被災地巡行
●うわさ話と替え歌
●空襲につぐ空襲、真吉は「御真影」の奉護係
●石田校長ほか、官吏は汚吏と化す
2 空襲に明け暮れ、戦争に倦み疲れる
●「本土決戦」にそなえて
●空襲下、たびたびの御真影「奉遷」
●「広島に新型爆弾」「日ソ開戦」「時局は益々重大」
Ⅷ 敗戦の秋、天皇崇拝だけは残った
──昭和二〇〈一九四五〉年8~12月
1 8・15からミズーリ艦上の降伏調印式まで
●8月15日、敗戦告知の「玉音放送」
●「敗けても静かのほうがいい」隣の小母さんの実感
●物情騒然、空には米機がブンブン飛び廻る
2 空襲はなくなったけれど
●東条自殺未遂を見る庶民の眼
●真吉日記が無視した天皇とマッカーサーの写真
●物不足の秋、すさむ人心
●昭和二〇年大晦日の真吉日記
あとがき