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「マグナ・カルタ(大憲章)」に始まる、権力者の横暴を許さない抵抗の歴史、人権や自由を獲得してきた人びとの歴史の痕跡を、在英30年の著者とともに訪ねた異色のロンドンガイドブック!
イギリスの首都ロンドンの街角には、紀元前のローマ軍の侵略から現在まで、2000年にわたる歴史が刻まれている。この本では、単に英国2000年紀を年代順にトレースしながらロンドンの街を歩くのではなく、「マグナ・カルタ(大憲章)」に始まる、権力者の横暴を許さない抵抗の歴史、人権や自由を獲得してきた人びとの歴史の痕跡を、在英30年の著者とともに訪ねた異色のロンドンガイドブック!
【編集者より】
小社「観光コースでない」シリーズの1冊として、数多あるロンドンガイドブックと異なる特徴を出すにはどうしたらよいか──。
イギリス・ヨーク在住の著者と徹底的な議論を経てようやく刊行にこぎ着けたのが本書です。
その企画を進めながら、書店や図書館でさまざまな「英国史」「ロンドンガイドブック」を手にして思ったのが、1冊にまとまったイギリスの「通史」が少ない、「ガイドブック」は観光と買い物を中心とした本が多いということでした。
「通史」が少ないのはなぜか? と考えると──
イギリスの歴史は、古代ローマ帝国の侵略をはじめとして他民族支配の歴史が1,500年も続いたこと、イングランド・ウェールズ・スコットランド・アイルランドの「連合王国」の誕生、その後、大航海時代・産業革命を経て築き上げた「大英帝国」の繁栄と衰退、そして世界の金融都市として蘇った現在まで、一冊の本にまとめるには複雑すぎるのがその大きな理由だと思いました。
そこで、著者には「1冊で英国史の流れがわかる本」、そして「観光コースでない」シリーズらしく、英国史の流れを概観しながら、権威や権力に対する人びとの抵抗の歴史、自由や人権を求めてたたかった人びとを紹介する「切り口」を求めるという、相当無茶なお願いをしました。
ぜひ本書を、ロンドンの新しい魅力を紹介するガイドブックとして、多くの読者に読んでいただきたいと思っています。
はじめに
Ⅰ 英国とロンドンの素描
イギリスという国家は存在しない
連合王国の誕生と「イギリス」の語源
議会・王室・教会
英国国旗と三人の聖人
教育現場で用いられない国旗
学校で教えない国歌「神よ女王を救い給え」
ロンドンは北国の首都
グレーター・ロンドンと東京二三区
ロンドンの中心はチャーリング・クロス駅前
テムズ川が語るロンドン2000年の歴史
7500台の赤いバスと平等思想
ロンドンのタクシー規制は一六三六年から
世界一取得が難しいタクシーの運転免許
Ⅱ 異民族支配の1500年
古代ローマ軍の侵略
ブーディカ女王の反乱
ロンドンに残るロンディニウム
ローマ軍占領の「遺産」
アングロ・サクソンの侵入
イングランド国王に即位したバイキング王
フランス系「ノルマン」の征服
ウィリアム征服王のイングランド統治
薔薇戦争
ドラゴンと赤い十字架の紋章
独自警察を持つザ・シティ
六八六代目のザ・シティの市長
マグナ・カルタ(大憲章)は英国人の誇り
今日に生きるマグナ・カルタ
マグナ・カルタを否定したローマ教皇
国会議事堂周辺とウェストミンスター特別区
イングランド議会の誕生
古くて新しいウェストミンスター大聖堂
キリスト教のイングランドへの渡来
Ⅲ 国家アイデンティティーの確立
イングランド国教会の創設──妻二人を斬首刑にした国王
レディー・ジェーン・グレイの処刑
「ブラディー・メアリー」と呼ばれた女王
「バージン・クィーン」=エリザベス一世
イングランド初の世界一周航海
スペイン「無敵艦隊」を排撃したエリザベス一世
王立取引所と東インド会社
女王が観た「真夏の夜の夢」
Ⅳ清教徒革命と王政復古
バグパイプとキルト
「ガイ・フォークスの夜」と国会爆破未遂
「メイフラワー号」と清教徒
清教徒革命の二人のブロンズ像
革命への道
清教徒革命
禁止された女性の化粧やクリスマス
王政復古──処刑されたクロムウェルの埋葬遺体
王立協会の創立──「誰の言葉も信じ込むな」
科学革命──占星術から天文学へ
Ⅴ 奴隷貿易から産業革命へ
ロンドン・砂糖と奴隷制度
三角貿易と国王の奴隷貿易会社
ロンドン大火と冤罪
ザ・シティの再建と個人主義
ロンドン初の「コーヒー・ハウス」
「コーヒー・ハウス禁止令」を出した国王
「コーヒー・ハウス」と男性ビジネス文化
結婚持参品だった紅茶とボンベイ
ロンドン初の紅茶専門店
名誉革命と「オレンジ・オーダー」
名誉革命の結果──「王は君臨すれども統治せず」
英語を知らなかった国王と最初の内閣首相
産業革命と陶磁器のウェッジウッド
なぜ英国で産業革命が起きたのか
Ⅵ ナショナリズムと自由・平等
トラファルガー広場のライオン像
「鉄の公爵」とナショナリズム
ロンドンにもいた黒人奴隷
論文出版が契機となった奴隷解放運動
結社・労働組合活動の自由
自由・平等の大学創立
カトリック差別の撤廃
大英博物館とカール・マルクス
マルクスを守った「表現の自由」
ハイド・パークと自由権
労働者・貧困階級と紅茶
焼失した「クリスタル・パレス」
Ⅶ 政治・社会改革の時代
ビクトリア女王と「ミセス・ブラウン」
バッキンガム宮殿
起きなかったロンドン革命
ピカデリー・サーカスの「アンテロス」像
グラッドストン首相の立像と女工の鮮血
歴史に火を点けた「マッチ女工たち」
セツルメント運動
スラム街へ入った若者と知識人
婦人参政権と「ホロウェイ監獄」
Ⅷ 二つの世界大戦
第一次世界大戦
秘密情報機関創設
婦人参政権運動を分断した第一次世界大戦
良心的兵役拒否
第一次世界大戦とシルビア・パンクハースト
ロンドンの労働者の国際連帯
「セノタフ」=空の墓
赤いポピーのファシズム
ジェームズ・ボンドの虚像と実像
ロンドンとファシズム
第二次世界大戦
Ⅸ 福祉国家・世界都市へ
「揺りかごから墓場まで」
反核運動とレディー・ガガの刺青
国際都市を象徴する国際バス駅
「鉄のレディー」サッチャー首相の登場
サッチャー政権の有形遺産
新労働党=「サッチャーの息子たち」
おわりに
中村久司(なかむらひさし)
1950年、岐阜県生まれ。岐阜県立斐太実業高校電気科卒業後、名古屋税関に就職。1975 年に税関を辞めて渡英し、日英を往来の後、1988 年からイギリスのヨーク市に永住。1994年、ブラッドフォード大学で日本人初の平和学博士号取得。在職中、英国の二つの大学で国際教育プロジェクトを担当。2008 年、日本国外務大臣表彰を受賞。
著作に『イギリスで「平和学博士号」を取った日本人』(高文研)、英語歌集『The Floating Bridge: Tanka Poems in English』(Sessions of York) など。寄稿に『第9条:和文と英文の差異』(軍縮地球市民No3)、『Peace Constitution of Japan』(The Oxford International Encyclopedia of Peace) など。
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